魚の鮮度 と 頑固おやじ

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さて料理の鮮度のよもやま話もつきましたので食材のほんとの鮮度?についてお話してみましょう。
今回は鮮度が一番重要視されるお造りに使う魚の鮮度についてです。

さて刺身にする魚ですがみなさんはどうやってお店やスーパーで品定めしてらっしゃるでしょうか? 刺身にする魚の品定め
は本当に難しいですね。マグロやたたきにするようなカツオなどの遠海物や冷凍物は置いといて、先ず鯛や平目あるいは
沿岸物の白身魚等の鮮度についてお話してみましょう。   鮮度と一口にいっても生物の筋肉の鮮度と熟成というもの
には実は恐ろしく複雑な仕組みがあるのです
。魚にかぎらず肉(牛、豚、鶏、等)やマグロやブリなどの魚体の大きな魚で
も全て理論は同じなのですが、まず食用に供される生物はある瞬間に命を絶たれますね。この瞬間からが食材としての
筋肉の熟成の始まりです。食材生物は命を瞬間的に絶たれ血抜きされてから、その筋肉は食材として熟成という過程に
入ります。この熟成の期間はその筋肉の大きさによってまちまちで、牛などの大型食材なら1週間から2週間ほどもかかると
言われ、また小型の小魚で魚体のいたみやすいものはほんの1時間であがってしまうようなものまでいろいろです。
血抜きされたばかりの筋肉の中には、実はまだまったく旨み成分は含まれておらず、熟成するにしたがって筋肉の中の
エネルギー(グリコーゲン)が旨み成分であるアミノ酸類に変わっていくのですね。そして熟成のピークを迎えてから次は腐敗
という行程に入っていきます。ですから理論的には食材は調整された熟成期のピークに食べると一番旨みが高いという
ことになるのです。
ですから牛肉などは、昔のお肉屋さんでは枝に真っ二に切られたまま冷蔵庫のなかでぶら下げられて
いたのですね。 あれはただぶら下げて保存されているのではなく実は熟成を待っているのです。 

それでは鯛や平目などみなさんがよく食卓で刺身で召し上がる大体1.5キロ前後の魚を例にとってお話しましょう。 
まず魚は通常市場に出荷される直前に所謂活け締めという手法で命をたたれます。
活け締めとは魚の頭の後ろに瞬間的に包丁を入れて苦しませずに命を絶つことです。   何故かと言うと苦しみもが
いて死んでいく魚は、苦しんでいる間に筋肉の中のエネルギーを使い果たしてしまい又暴れるうちに血もまわってしまいます。
この筋肉の中のエネルギー(グリコーゲン)が、実は活け締めされたあと熟成という段階で旨み成分(アミノ酸)に変化していくの
です。活け締めされたらすぐに尻尾のところにも小さく骨まで入るように包丁目をいれてすぐに血抜きをします。丁寧にやる
にはすかさず頭と尻尾をもって魚体を強くぐいっと折り曲げます。  こうすることによって脊髄の神経を断絶するのですね。
もっと丁寧に天然の鯛など高級魚では、脊髄の中に細い針金を通して完全に神経を抜いてしまいます。こうやって出来る
だけ筋肉を言わば仮死状態にしてできるだけ長く活かっている状態で(身がぷりぷり弾力がある状態のこと)消費者の食卓
まで届くように配慮するわけです。また養殖物は別にして天然の魚は活け締めされる前に、漁師さんが釣り上げてから船の
底の生簀で最低でも6時間から半日の間浮き袋の空気を抜いて腹の中のものが空っぽになるまで活け越しされます。
この活け越しという手法をされずに出荷された魚をあらうおと言い、これはいくら活け締めしてもすぐに身があがってしまいお造り
にはできません。ですから天然鯛などの一本釣りの漁師さんは絶対に活け越しせずに魚を出荷しません。熟成させながら
なおかつ身は生きた状態でと研究されてきた、昔からの魚に関わる職人たちの素晴らしい文化の結晶なのです。
ここでみなさん おや?っと思われるでしょうか。では生簀料理で生きた魚をその場で活け造りにしてるのはどうなるの?と。。
あれは新鮮で美味しいのだと思い込んでいるだけで、実は身に旨味はなくて小皿の醤油とわさびの味しかしないのですね。。。

さてことほどさように魚とその鮮度には、おぞましいほどの複雑な理論と手法が裏で行われていたのです。みなさんご存知で
したか? (^▽^)   ですから一般の方にはこのような複雑な工程と魚の状態を品定めするのは至難の業ですね。
では どうすればいいの? と思われるでしょうが、答えは簡単です。 魚のことを何でも知ってるがんこおやじのいる魚屋
で買いましょう!
 魚の品定めをライフワークとしているようながんこおやじの魚屋さんなら、トロ箱の上から魚をのぞいただけ
で、あるいは足先でちょいとトロ箱をゆすってみて魚の揺れ具合を見ただけで、がんこおやじはその魚が何時ごろ上がって
しまうか、どんな味がするかまで分かっているのです。     これ本当ですよ、、、、。(^▽^)


不思議なもので、我々でも毎朝市場に通い『ああでもないこうでもない』と鯛や平目の頭をぶら下げて品定めしていると、
5年もやれば大体この鯛が何時ごろどうなるか、あるいは大体どこで捕れたものなのかまでなんとなく判るようになります。
料理屋は自分の店で使う限られた種類の魚しか判りませんが、プロの魚屋はなにしろ販売されているあれだけの種類の魚の
ことを判っているのですから、その知識を買わない手はありませんね。どうしても一度経験してみたい方は、鯛などの丸ごと
の魚を目玉に指をつっこんで頭を横にしてぶら下げてみてください。 できるだけだらりとぶらさがるものが活かりがいいのです。
すこしでも硬直が感じられるものは多少上がりかかっています。その具合でだいたいの頃合の時間を見計らうのですね。
さて 魚にはこのほかにも捕れた海域、地方、時期(旬であるかどうか)、魚体の美味しいちょうど良い大きさ、あるいは漁の
手法
など言い出したらきりがないほどの食材選びのチェック項目があります。 

   ですから冒頭に書いてある通り。。。。。。
 魚の鮮度と品定めは がんこおやじに頼みましょう。 いい魚だけを売りたい、、、と思っている頑固な魚屋なら その知識
 と経験も一緒に買うと思えば、決してスーパーなどより高いとは言えませんね。  魚の鮮度と がんこおやじ。。。でした。(^▽^)