これも冬の定番 茶碗蒸です
さて定番中の定番 茶碗蒸しのこつを今回はお話してみましょう。 意外と簡単な料理なのに苦手な方が多いのだそうですね。 当店のやり方が参考になれば幸いです。
まず蒸し生地ですね。 ベースは良質の昆布かつおだし です。 具の種類にもよりますが基本的にはかつおはやはり4 パーセントは欲しいですね。 だしの取り方はレシピの一番 最初をご覧下さい。 卵はその持っている力にもよって分量は 違いますが、基本はこのかつおだし4に対して卵が1です。まず 作る分量を量ってみてそこから割り出してみたら良いでしょう。 四人前なら器四杯の量を量ってみて600ccなら卵はざっと 120ccというわけですね。卵を割りいれてよく混ぜてから600 ccになるように冷めた出汁を入れて必ず濾し網で濾します。
生地の滑らかさが違ってきますので必ず濾してください。 味付けは塩(ここでもやはりゲランドです)と 色が変らない程度の香り付けに薄口醤油、隠し味に酒と味醂を少々です。 これも吸い物程度かそれ 以上にしっくりと下味がついてないと、どんな具が入っていても美味しくなりません。かならず生地の状態で しっかり味見してください。例によって味見は喉の奥で喉越しの味を見るようにしてください。この味が食 べた時の余韻です。舌の上で見ないようにして下さい。吸い物でも煮物でも味見は喉の奥です。 この味と旨みが最後まで残る味です。
卵とだしの割合ですが、要するに仕上りの柔らかさの問題ですね。 実は茶碗蒸にかぎらず、液体を 固める料理、たとえば前出の卵豆腐や吉野葛を使った葛きりや胡麻豆腐、ゼリー寄せやプリン或いは だし巻など全て料理の理論から云うと材料が固まっているならば出来うる限り柔らかい方が美味しいのです。 食感(テクスチャー)と言いますが、このような料理では食べられる程度に固まっているなら柔らかく仕上げ るのが理論的には美味しいと云われています。茶碗蒸しでも私はそう思います。卵の力にもよりますが うちではだいたい4対1で作ります。スプーンで掬ってもつぶれるような柔らかさで、ましてや箸ではつまめ ませんがそれでいいのです。 茶碗蒸とは吸い物代わりで飲みながら食するものなのです。騙されたと 思ってできるだけ柔らかい茶碗蒸を作ってみてください。箸でつまめるような茶碗蒸しよりずっと美味しい と思われると思います。 (^▽^) さて茶碗蒸の具ですが 前出の土瓶蒸しのところでも話しましたが、二通りの考え方があります。 いろんな具が入って味が乗って美味しくなるという考えと、香りや味があまり混ざらないように具の 種類は少なくして良質なものを使うという考え方です。 私はどちらかというとシンプルなほうが好きで す。 具の取り合わせにもよりますが、あまり何種類も混ざらないほうが生地が美味しいと思います。 では具の取り合わせの例と処理の仕方等を少しお話しましょう。 *焼き穴子と海老 ぎんなん 椎茸など 海老は例によってこれも殻をむいて霜降り 焼き穴子はとても良い濃厚なだしが出ます。良質なものをできれば半匹分入れて下さい。 *海老と鶏肉 鶏肉は霜降り ささみや胸肉を使う人が多いようですが味が出るのは 腿肉です 黄色い脂の部分をきれいに取り除いて下さい。 香りには冬なら柚子の皮 春先なら木の芽ですね。 彩りに三つ葉を入れても綺麗ですが 色が飛ばなように蒸し上がりにさっと入れるのがこつです。 変わったところでは吉野葛での銀餡を 上に少し掛けて吸い口はおろし生姜や茗荷 生うにをのせて銀餡を被せても綺麗ですね。 さて蒸し方のこつですが まず蒸し器に湯を十分煮立たせておいてから、器に下処理をした 具を入れて準備しておいた生地をよく混ぜてから注ぎいれます。 生地はすぐに卵が沈殿します ので必ずよく混ぜてください。 湯気の立った蒸し器に蓋をして入れて一気に強火で表面が固 まる程度まで蒸します。器の大きさにもよりますが通常の筒型の茶碗蒸の器なら5分から8分程度で しょう。 とにかく表面が固まってくる程度まで強火で固めたら、弱火にして今度はじっくりと火を通し ます。こうすることによって焼き穴子などの味が生地に十分染み込んでいくのです。 最低でも15分 は蒸したいですね。 こうすると絶対にスは入りません。 ご家庭の器で最初は何度も様子を見ながら 表面が固まるまでの時間を計ってください。 表面が固まればあとはじっくりと蒸すだけです。 弱火にしておけば絶対にスは入りません。スが入るのが怖いからといって最初から弱火で蒸しては いけません。生地に力がなくなってしまいます。 さて蒸しあがったらあつあつを季節の香りとともに頂きましょう。 季節の移りゆくはざまに 何故だかそこに季もほんのり香るような気がしますね。 © Japanese Restaurant Kakiko All rights reserved. 茶碗蒸と季の香りでした。