鱸(すずき)の洗い

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さて魚の鮮度のお話をしましたので、今回はこの季節に旬の鱸の洗いをご紹介いた
しましょう。 鱸にかぎらず刺身のなかで、この洗いという手法は同じですので材料は
鯛でもちぬでもよろしいですね。
それではまず鱸の下ごしらえから始めましょう。今日は海が荒れていたらしく天然の
良い鱸の入荷がありませんでしたので、手ごろな大きさの養殖物の鱸を仕入れました。
逆にこれぐらいの大きさなら、ご家族の多いお宅ではまるごとでも白身ですので
ぺろりと食べれてしまいますのでいいかもしれませんね。 天然物のすずきは良いもの
は概して魚体も大きいのでなかなかご家庭では手に入れにくいかもしれません。

さてこの鱸ですがいわゆる出世魚というやつで、大きくなるにつれて名前が変ります。 小魚の大きさのころのせいごからふっこ 
すずき と変わっていきますが、せいごの大きさのころには概して川下の河口と海の入り口のあたりに生息しています。それから
だんだん大きくなって海に出ていってすずきとなるのですが、そういう習性からか川魚の味ももっている魚ですね。ですから少し
川魚特有の泥臭さみたいな癖をもっていますので洗いにするのです
。 もちろんそのままでも刺身になりますが今回はお決まり
の洗いにしてみましょう。 魚の鮮度のページでもお話しましたように目玉に指をつっこんでぶら下げてみて、だらりと下がるものほど
活かりがよろしいです。しっぽの方に少し硬直を感じられるものはすでにしまりかかっていますので、昼前でこの状態なら晩御飯の時
間には確実にあがってしまいます。 そんな時は洗いは昼ご飯にしたほうが賢明ですね。しまってしまった白身の魚は洗いにも
造りにもなりません。 晩御飯にするにはバター焼きにでもしてください。オリーブオイルとバターでこんがりと焼いて上がりに醤油
をからめて檸檬でも絞れば塩焼きよりは癖もなく美味しくいただけます
。  さてそれでは鱸ですがうろこを奇麗にひいてえらを
取り腹を取ります。腹の中骨のところの血合いに包丁をいれて奇麗に指で血合いを取り除き水洗いします。写真のように腹の
膜もきれいにとってください。 それからタオルか何かでよく水気をふき取ります。ここで魚体も包丁も濡れたまま扱うと身に水が
ついてしまいあっという間に上がってしまいます。 くれぐれもよく水気をふき取ってください
。 それから常道どおり3枚におろしてい
きます。鱸も鯛も骨が硬く中骨にそって包丁を入れていくと比較的おろしやすい魚ですので、興味のある方は一度ご自分で
挑戦してみてください。 出刃包丁があれば意外と簡単ですよ。 

さて三枚におろした身はまず腹骨をすきとり中骨にそって縦に切って中骨をはずします。鱸は背中の部分が二つに割れます
のでできるだけ割れが少ないように大きく包丁を使うのがこつです。写真のように腹と背とで4つに切り分けたら今度は尻尾
の方から刺身包丁を入れて皮を引いていきます。皮を左手で持ってしっかりとひっぱりながら包丁をまな板に水平よりほんの
一ミリほど立てて皮だけを引きます。 写真のように出来た状態が上身といわれる状態です。 ちょっと無理かなと思われる
方はこの状態まで魚屋さんでやってもらいましょう。 (^▽^)  

この洗いとは昔は夏場の食欲のない時に脂と魚の癖を落としてあっさりと食べるという手法だったのですが、
現代では特にこの養殖の鱸などには持って来いの手法です。なぜかというと所謂養殖魚の養殖臭さと無駄な
脂を落としてくれるからです。近年鯛などの養殖物はとても質も良くなり変な脂臭さもなくなってきましたが、
この鱸などはやはり洗いのほうが断然美味しいですね。 是非この洗いをおためしあれ。

さて上身になったものを薄くそぎ作りにしていきます。洗いにするには薄作りといってもある程度の厚みがないと美味しくありません
ので、洗いにして切れ端が立つ程度の薄さ(3ミリ程)に切り出していきます。 洗いに限らず白身の魚の薄作りはふぐのように
向こうが透けて見える程薄くしたら味もなくなってしまいます。魚体の大きさと身の強さによって薄さを加減してください。身が強く
硬いほど薄く削ぐというわけですね。 ちなみにふぐはすごく身が硬くまた活かりも長いので、しっかりした天然物なら上身にして
さらしに巻いて一日冷蔵庫で寝かせてから次の日に薄作りにします。鯛や鱸の場合は活かっている状態でないと美味しくあり
ませんので逆に活かり具合を見計らって料理するのです。 
さていよいよ洗いの行程に入ります。 洗いにする水の手法ですが、これも昔からいろいろとやり方が云われてきていますね。
冷たい井戸水で洗うとか、水道の蛇口にホースをつけて指で勢いよく水をだして躍らせながら洗う
、などです。
今回ご紹介するのは 玉水という手法です。    玉水というのは日本酒と氷水と半々の割合で作った水です。  これは
水を入れて躍らせるわけにはいきませんので箸でかき混ぜながら身を躍らせます。切れ端がちじれてきたらすかさず玉水からあ
げてすぐに上下にタオルか何かをひいてしっかりと水気をとります。 それをそのまま冷蔵庫で15分から20分ほど冷やしてしめて
から供するようにしてください。    料理の鮮度のページでお話したようにこの料理も料理するタイミングと時間がすごく重要
な料理です。 食べる時間を見計らって料理してみてください。玉水の酒の割合は適当で結構です。水だけなら水臭くなる
ので酒をいれて旨みを入れてやろうという手法ですから無理に半分酒が入っていなくても結構です。(^▽^) 
水はできれば浄水器のものが良いですね。洗いのこつはまずこの水(玉水)の温度ができるだけ冷たいことです。 それと先ほど
申しあげたように料理のタイミングです。 今回は少し盛り付けは現代風にしてみました。 つけだれはぽん酢です。 薬味は
山葵かもみじおろし それに小さなねぎの刻みか茗荷 大葉などですね。 写真は穂紫蘇を振っています。